こんにちは!ふくろう博士(college_blog01)と申します。
国立理系大学の場合、多くの学生が進学を検討するであろう修士課程。
大学によっては8割以上の学部生が大学院に進学することも珍しくありません。
かくいう私も、「周りのみんなが大学院に進学するから」「修士で就職活動をすれば生涯年収が増えそう」という浅はかな理由で大学院に進学しました。
大学院では紆余曲折あったものの2年間で修士号を取得し、とある企業の研究員として民間企業で働いています。
今のところ満足のいくキャリアを歩めていますが、社会人になると学生時代の私が修士号について勘違いしていたことも分かるようになってきました。
そこで、今回の記事では「修士号の価値と修士課程に進学するべき人、学部卒が向いている人」について社会人という観点から紹介したいと思います。
全ての理系大学生にとって非常に参考になる内容なので、最後までご覧いただけると幸いです。
修士号取得のメリット
はじめに、修士課程に進学した場合のメリットについて紹介します。
大学生なら誰もが知っていることから、社会人にならないとわからない意外なメリットもあるため是非参考にしてください。
学会経由で内々定が得られる
多くの大学生が知らないメリットの一つに、学会を通じた企業の勧誘があります。
比較的大きな学会では、企業の名前を冠した「○○賞」という賞が用意されています。
このような学会では、必ずと言っていいほど優秀な学生に対して企業研究者の接触が図られます。
企業にとっても、数十分程度の面接より研究成果を直接判断した方が正確に人物像を判断することが出来るためですね。
研究成果は立派でも、質疑応答がままならない学生は「指導教員に無理やり研究させられてるだけだな」 といった判断も容易に行えます。
近年では、その年に採用する研究職の一部を学会経由で確保する企業も増えています。
そのため、優秀な学会発表を行える修士課程の学生は就職に有利と言えるでしょう。
2年間の猶予が得られる
大学院に進学する2年間を、自分のキャリアと真剣に向き合う猶予期間にできるのもメリットのひとつです。
学部卒で就活を行う場合、3年の夏には行きたい業界や業種のインターンに参加する必要があります。
しかし、すべての学生が希望業種を決められるわけではありません。
そうした時に、修士課程に進学することで選択を遅らせることができます。
根本的な解決にはなりませんが、2年間の猶予期間で様々な経験通じて自己分析を深めることができます。
学部卒よりも進路選択にかける時間が長くなるため、しっかりと自己分析を行うことができれば企業とのミスマッチは減ることが期待できます。

「自分は○○職に向いている」と思っていても、ちょっとした体験から自身の隠れた才能を見つけることがあるよ!
自分の隠れた可能性を見つけるといった意味でも、2年間の猶予期間を得られるメリットは大きいね!
最低限の研究スキルが得られる
『卒論は参加賞、修論は努力賞、博論は免許証』と表現されるように、 ある程度努力をしないと卒業できないのが修士課程です。
指導教員から与えられた実験内容から少しでも発展させるには、就職活動以外にもある程度時間を割ける修士課程への進学がほぼ必須といえるでしょう。
大学院といった特殊な環境でしか得られない知見も多々あります。
とはいっても、最近は研究に熱意のない学生が就職活動のためだけに進学している例も少なくありません(私はこのタイプでした)。
指導教員の教育に対する熱意や本人のやる気によってえられる経験値は異なってくると思います。
修士課程に進学したからといって自動的に研究スキルが上がるものではありません!
日々の研究生活を主体的に過ごし、 研究結果に対して自分なりの考察を提示できるような人材を目指しましょう。


上記の記事は反面教師として役立てて下さい。
修士課程進学のデメリット
修士号を取得する場合、一般的に考えられるデメリットとしては「学費がかかる」「社会に出るのが2年間遅れる」といったものが挙げられます。
多くの学生はこれらのデメリットを理解したうえで進学しますが、修士号を取得し社会人になった後に気がつくデメリットもあります。
下記に示すデメリットは、修士号取得のデメリットとというよりも民間企業の研究職として就職するデメリットと言い換えてもいいかもしれません。
私自身が学生の頃には考えもしなかったなデメリットもあるので、「こんなこともあるんだ」と思いながら読み進めてもらえると嬉しいです。
社内外の人間に敵視・過度な期待をされる
社会に出て一番痛感したことは、「世の中には本当にたくさんの種類の人がいるんだな」ということです。
当然ですが、社会にいるの全ての人間が大学院を卒業したわけではありません。高卒や高専卒、専門学校卒といった方々と日々仕事をしています。
また、社内だけではなく社外の方々とも連絡を取り合ったり協力して仕事を行うことがあります。
ほとんどの方は社会人として常識の範囲内で接してきますが、まれに初対面から突っかかってくる方も存在します。
また、悪意のあるなしにかかわらず
「大学院まで卒業したのにそんなことも分からないの?」
といった旨の言葉を投げかけられることは正直多いです。
同じ大学院卒の同期の話を聞くと、案外気にする人も多いので注意しておきましょう。
どんな企業にも必ずこういった人は存在すると思うので、頭の片隅にでも覚えておくと良いかと思われます。
研究の世界は狭い
現在大学院にいる方は共感できると思いますが、アカデミックな世界は案外閉じた世界です 。
学会で講演している人が昔勉強した本の著者だった
研究室の教授が学会の理事をやっていた
研究室に来たおじいちゃんが実はその分野の偉い人だった
こんなことが頻発するのが学問の世界です。
閉じた世界でうまくやっていける人には良い環境ですが、教授と馬が合わない場合には注意が必要です。
彼ら独自の情報網で学生の情報は拡散されるため、良くも悪くもあなたの情報はすべて共有されます。
昇進や転職が難しい
昇進やスキルアップのための転職が難しいのも特徴です。
業種選択の際、学生が意識しないことの一つに「職種別の需要」があります。
例えば、施工管理という業種は有資格者が常に人手不足のため、転職市場が活発で広く需要があります。
また、契約を取れる優秀な営業マンも同様に社会に必要とされます。
これらの業種は「資格」や「スキル」といった個人の強みが評価されやすく、結果的に昇進やより有利な転職に繋がりやすいといった特徴があります。
一方で、 研究は少人数のグループ単位で行うことが多いため、個人の強みが明確に評価されにくい仕組みとなっています。
研究職のみに在籍して昇進できる人材は限られており、大抵は品質管理や設計、開発部門に配属後に実績を積んでから昇進する人が圧倒的に多数派です。
このように、研究部門のみでキャリアを形成することは個人の成果を正確に反映されにくいことはデメリットといえるでしょう。
修士課程の進学を決める時期
修士進学のメリットとデメリットについて紹介しましたが、人によってはまだ進学するべきか迷っている人も多いと思います。
確かに、修士進学はキャリア選択における大きな分岐点であるため、自分なりにじっくりと考える時間が必要でしょう。
家族や先輩、信頼できる教職員と相談する時間も必要です。
しかし、いつまでも悩み続けるのは賢明ではありません。博士課程に進学する場合を除き、ほとんどの学生は就職しなければならないからです。
就職にかける時間を考えると、大学院進学を決定するタイムリミットは学部3年の7月まででしょう。
なぜならば、優良企業がこの時期からインターンシップを本格化させるためです。
就職活動は大学受験と同様に「早い者勝ち」のルールです。早い時期から行動を始めることで、少ない労力でより良き就職先を得ることができます。
人によっては、「研究室に配属後、自分が研究に向いているのか様子を見ながら進学するか決めればいい」と考えている学生もいるかもしれません。
しかし、研究室配属後の段階では明らかに遅いです。自分にとって研究活動が向いていないと分かった頃には優良企業の採用は終わっています!
より有利な状態で就職活動を迎えるためにも、早い段階での決定が重要となるでしょう。
結局のとこと修士号は必要?
必要なのはこんな人
- 博士課程後期への進学を視野に入れている人
- どうしても研究職でなければ嫌な人 (※1)
- 最終学歴を高めたい人(※2)
不要なのはこんな人
- 職種に明確なこだわりがない人
- 博士課程後期に進学予定がない人
- それなりの大学に在籍している人 (※3)
- 学部の実験等であまりワクワクを感じなかった人
※1 民間企業の場合は研究部門から他部門への望まない配属転換アリ
※2 いわゆる学歴ロンダ(中退率が内部生より高まるため覚悟が必要)
※3 優良企業に入ってしまえば仕事の成果で勝負する世界になる
まとめ
今回の記事では修士号を取得する価値と就職に与える影響について解説しました。
大学院に進学するか否かは人生のキャリアプランにとって重要な選択肢であり、慎重に決める必要があります。
この記事の内容があなたの人生に少しでも役立つことができれば幸いです。
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